加瀬英明のコラム
  • メールアドレス登録をすると最新のコラムをメールでお送りします。
  • メールアドレスの登録/解除はご自身で自由に行えます。

  トランプ政権は対中強硬派が勢揃い 慌てる中国・習近平主席
    Date : 2017/02/22 (Wed)
 トランプ政権が発足した。トランプ大統領は、「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン!」(アメリカを再び偉大な国家としよう)というスローガンを唱えて、ホワイトハウス入りした。

 中国の習近平国家主席が「偉大なる5000年の中華文明の復興」を叫んでいるのと、何と、よく似ていることだろうか。「メイク・チャイナ・グレイト・アゲイン」と、訳することができる。

 習主席は機会あるごとに公の席上で、「戦争に備えよ」と呼び掛けている。

 他方、トランプ大統領候補は選挙事務所に、レーガン大統領と西部劇の名優のジョン・ウェインの等身大の写真を飾っていた。大衆に訴えるために、乱暴な口調を使ってきたが、私には「メイク・アメリカ・タフ・アゲイン!」と、聞こえた。

 トランプ大統領は、当選後に台湾の蔡英文総統に電話をしたうえで、「“1つの中国”政策によって縛られない」と述べて、習主席という龍の鱗(うろこ)を逆か撫でした。

 習主席はトランプ大統領が中国がアメリカから一方的に巨額の貿易黒字を稼ぎだしているのは、許せないというかたわら、ティラーソン国務長官が中国が南シナ海に埋め立てた人工島に、近づけないようにすると発言したのをはじめ、政権の中枢に対中強硬派が勢揃いしているのに、慌てふためいているにちがいない。

 これから、龍とアメリカ鷲が鱗と羽根を散らして、大喧嘩を始めるのだろうか?

 習主席は2期目の5年をつとめるために、目前に改選を控えているから、アメリカと波風を立てたくないはずだ。といって、タフな指導者を演じなければならないから、アメリカに対して断乎たる姿勢を、とらなければならない。

 トランプ大統領からみれば、中国がアメリカ市場から年間3200億ドル(約35兆円)以上の貿易黒字を稼ぎだして、海軍の拡張に注ぎ込むかたわら、札束で周辺の諸国の頬を叩いて、アメリカ離れをはかっているのは、何とも我慢できない。

 習主席は中国がこれまで自由貿易のルールを蹂躙してきたのにかかわらず、トランプ大統領の就任直前に、ダボスにおける世界経済フォーラムに出席して、似つかわしくない自由貿易の旗手として振舞った。いかに、たじろいでいるか示した。

 トランプ氏は“メガホン候補”だったが、「中国からの輸出に45%の関税をかける」と、脅していた。

 米ソの冷戦下で、ソ連はアメリカとの貿易に依存していなかったが、中国は経済がアメリカ市場に寄生している。いま、習主席の中国は経済が断崖まで追い詰められており、アメリカ鷲と渡り合ったら、体制の土台が大きく揺れかねない。

 日本では一部に、トランプ政権が日本の頭越しに米中が手を握って、日本が孤立するのではないか、杞憂する声がある。つまらない取り越し苦労だ。

 トランプ政権は、アメリカの歴代政権がこれまで中国に媚びて、台湾を軽視してきたが、台湾を守る姿勢を明らかにしよう。

 日台間には公的な関係がまったくないが、敵性勢力が台湾を支配下に置くことがあったら、日本は独立を維持することができない。アメリカが台湾を重視するのを歓迎したい。


  国境を無視する中国の脅威と日露外交
    Date : 2017/02/09 (Thu)
 私は12月にロシアのプチン大統領が来日する直前に、新聞に北方領土の返還を期待することは、とうていできないと寄稿した。

 私の予想通りになった。日本のマスコミはロシアが譲歩するかもしれないという、甘い見通しを流していたが、ロシアに食い逃げされた。

 ロシアは戦争によって奪い取った領土を、返すことをしない。

 私は4月に晩餐会で、アファナシェフ駐日ロシア大使と隣席した。プチン大統領がシリアを爆撃したパイロットに勲章を授ける映像を、テレビで見た後だったので、話題にしたところ、「わが国では勲章を貰ったら、ウォッカをなみなみとついだグラスにポトンと落し、一気飲みするのがマナーです」といった。気が荒い人々だ。

 ロシアの夏は短い。麦の収穫を慌てて、大急ぎですまさねばならない。細かいことに構っていられないから、繊細さを欠いている。

 ロシア人は力しか、信じない。ロシアは9世紀の小さなキエフ公国が、今日の世界最大の領土を持つまで膨張したから、国境という概念がない。この点、中国と共通している。

 「偉大なるロシア」という言葉が、ロシア人を酔わせる。中国人が習近平国家主席の「偉大なる五千年の中華文明の復興」という呼び掛けに、奮い立つのとよく似ている。

 プチン大統領は「冷戦によって、ソ連が解体したのが、20世紀の世界の最大の悲劇だ」と公言している。まだ冷戦時代に生きているのだ。毛沢東以来中国の最高指導者が、中華大帝国の復興を夢みてきたのと、変わらない。

 プチン大統領の国内支持率は、2014年に原油価格が暴落してから経済状況が悪化し続けて、国民生活を圧迫しているにもかかわらず、80%を上回っている。プチン大統領が2014年にウクライナからクリミア半島をもぎ取り、中東のシリアに軍事介入してアメリカにひと泡吹かせ、勢力圏を拡げていることに、国民が喝采しているからだ。

 日本政府は、プチン大統領にシベリア振興を中心とする、「8項目の経済協力プラン」を提案して、受け入れられた。ロシアは先端兵器はつくれても、消費材は何一つつくれない。石油、天然ガス、金、ダイヤモンドなどの採集経済に依存している縄文時代の国だから、そううまくゆくまい。

 「8項目の経済協力プラン」の第1項目が、「ロシア国民の健康寿命を伸長する」ことだ。だが、ロシア国民が短命なのは、医療の問題ではない。

 ロシア人はアルコールといっても、ウォッカ浸しになっている。もっとも安価なウォッカは、1瓶190ルーブル(約330円)するが、密造のウォッカなら100ルーブルあまりで買える。

 12月にシベリアのイルクーツク市で、メチルアルコールが入った入浴剤を飲んだために、71人が死んだことが、日本でも報じられた。このような入浴剤は70ルーブルで買える。密造酒や、代替品による死者が多い。

 ロシア経済は縮小しつつあり、昨年度のGNPはマイナス4%に陥っている。そのかたわらで国民の高齢化、少子化が進んでいる。

 毎年、プチン大統領は筋肉隆々の上半身を誇示した、カレンダーを発売してきたが、ドーピングに用いられる筋肉増強剤の成長ホルモン(HGH)と、男性ホルモン剤のステロイドを注射しているという、噂があった。

 ロシア選手団が昨夏のリオ五輪大会からドーピングのために締め出されたから、私は今年のプチン大統領のカレンダーから、裸の上半身の写真が消えるだろうと思ったが、その通りになった。

 ドーピングすると気持ちが高揚するが、ボディビルに打ち込む者は、自己愛に溺れるナルシストが多い。プチン大統領もその1人だ。

 それでも、日本は中国の脅威に対抗するために、ロシアと手を結ばなければならない。


  佳人に心がときめくのは若さの証し
    Date : 2017/02/08 (Wed)
 年末が近づくと、80回目の誕生日が巡ってきた。

 もうすぐに80歳になるのだと、とうてい主観的に納得することができないが、客観的にいってその年齢に達するのだろう。

 きっと、男のなかには誰もが少年が棲んでいて、齢(よわい)を重ねることを拒むにちがいない。

 暦が12月に入ってから、ふと、魏王となった曹操(155年〜220年)の「去日苦多 何以解憂(去る日はなはだ多し、何を以て憂を解かん)」という句を、思い出した。たしか、「酒を酌んで自らをェ(ゆる)し」と続いている。

 曹操は戦国時代の英雄の1人だが、武将としてだけではなく、文人としても名高い。「苦」は「はなはだ」、「著しく」という意味である。

 12月なかばに、親しい人々が毎年のように170人ほどホテルオークラに集まって、賑々しく誕生日を祝ってくれた。最高齢が90歳のライフストアの清水信次会長で、最年少が今年8歳といっても、盲導犬として引退する年齢になった、オレオ君だった。

 つぎつぎと賓客が登壇して、祝辞を述べてくれたなかで、「仐寿」という言葉が多かった。

 もっとも、日本では80歳(やそじ)を「仐」寿というが、「卆」寿というのと同じように、漢字のもとの中国にはない、日本製の略字だ。

 祝辞のなかで、「来年は81歳。『半』という字を解くと『八十一』になって、人生の折り返し点になります。あと82年頑張るように」と励まされたのに、意気が高揚した。

 中島繁治兄哥(あにい)が、いつもフランス人形のように美しい姐さんと手を携えて、来会してくれたのが嬉しかった。

 姐さんは春風が運んできた桃の花びらを、そのまま裁(た)ったような華やかなドレスに包まれていた。私が挨拶すると、にっこりと微笑んでくれた。

 いつの時代の句なのか、すぐに思い出せなかったが、「美妃顧我笑 粲然啓玉齒(美妃我を顧みて笑い、粲然(さんぜん)として玉齒を啓(ひら)く)」という漢詩が、頭に浮んだ。

 宴という字を解くと、屋根(うかんむり)の下に太陽のように美しい女性がいるから、宴(うたげ)になる。姐さんのお蔭で、会場が輝いた。

 男は何歳になっても、佳人(かじん)――みめかたちのよい女性に会って、眩しく感じるうちは、まだ若い。

 先の句は、漢詩に多い遊仙歌の一つだ。気っぷがよい兄者と姐さんは、いつも相伴っておられるが、日の本の最良の女夫(めおと)だ。兄者と姐さんは仙境で結ばれたに、ちがいない。

 まさに、「比翼の鳥、連理の枝」だ。比翼の鳥は、極楽鳥とも呼ばれる。『平家物語』のなかに、理想の男女の契りを「天に住まば比翼の鳥、地に住まば連理の枝」と描いているが、唐代詩人の白居易の『長恨歌』にある一節を借りたものだ。

 私も妻帯者だが、結婚は難しい。きっと夫婦の縁は天で結ばれるから、つねに雷鳴や、稲妻が絶えることがないのだろう。

 明治天皇が下された『教育勅語』は、「子ハ孝ニ」「夫婦相和シ」と命じているが、親は子を可愛がれとか、恋人は睦まじくしなさいという戒めは、ない。

 やはり夫婦が相和するのは、難しいからなのだろう。

 地球の大気には宇宙線が絶えず、降り注いでいる。

 私たちはこの宇宙線の高エネルギー粒子が滝となって、無数の衝突を繰り返すなかで、生かされている。

 あらゆるエネルギーは、衝突することによって生じるが、夫婦喧嘩も生命力を働かせるエネルギーの素なのだろう。

 結婚生活は人生における、厳しい修業の一つだと思う。禅宗のように、合理的な思考を停めなければならない。

 私は武道を嗜んでいるが、つねに礼節を旨として、勝敗に拘泥せずに、平安平静な心をもつことが重視されている。書道でも、日本舞踊でも、我を捨てた時に抑圧されず自在に、体や、手が動くようになるという。

 結婚はいっさいの論理を超越して、悟りをひらく行いであって、武道や、座禅や、ヨガの瞑想法に通じるものがある。

 これまでの半生の折り返し点といえば、40歳だった。

 この年に、福田赳夫内閣が発足した。対米折衝を手伝うように求められて、首相特別顧問という肩書を貰って、ワシントンへ向かった。

 20代から雑文書きを生業(なりわい)として、糊口を凌いできたが、そのかたわら視覚障害者を援ける障害者福祉に携わるようになってから、40年になる。その縁で、今年の誕生会にもオレオ君が、美しい全盲の演歌歌手の八汐由子さんを連れて、参加してくれた。

 だが、私たちは健常者だといっても、全員がどこかに克服すべき障害を、かならず何かしらもっているものだ。私の場合は、生来怠惰なのと、妻に対する思い遣りをしばしば欠いてしまうのが、障害だ。もちろん、反省しているあいだは、向上する望みがある。

 私は全国盲人写真展を主催してきたが、高名な写真家の審査員たちが、舌を巻くような優れた作品が多い。

 これは、盲人写真に限らない。両腕の筋力を失った若者が、口に棒をくわえて、見事なコンピューターグラフィックの絵をかく。

 私は全盲の作者による、見惚れるような写真に触れるたびに、障害者から健常者に対して、もっと努力するように励まされている思いに、駆られてきた。

 誕生会の司会と受け付けは、オレオ君も理事の肩書を持っている、(社)視覚障害者芸術支援協会のメンバーがつとめてくれた。
(文中の中島繁治氏は、掲載誌である日大OB誌発行者)


  海洋覇権を夢想する中国 尖閣諸島に迫る危機
    Date : 2017/01/24 (Tue)
 12月25日に中国初の空母『遼寧』が、駆逐艦、フリゲート艦5隻をともなって、宮古島沖を抜けて、はじめて太平洋へ向かった。

 『遼寧』は冷戦終結後に、中国がウクライナからスクラップと偽って購入し、空母に復元して、4年前に就航した。中国は大海軍の建設を進めており、さらに2号艦、3号艦の空母を建造中である。

 そのかたわら、中国は南シナ海に“海の長城”として、7つの人工島を造成して、アメリカに軍事化しないと約束したのにもかかわらず、戦闘機、ミサイルの配備を始めている。

 大陸国家が大海軍を建設して、成功した験しがない。日露戦争のロシアのバルチック艦隊と黒海艦隊、第一次大戦のドイツ海軍が、そのよい例である。

 太平洋を航行する『遼寧』は、日清戦争で巨艦を誇った北洋艦隊の再来のようなものだ。

 私は北京郊外で、西大后がつくった頤和園を訪れた時に、池のなかに設らえられた巨大な大理石の船を見たことを、思い出した。

 南シナ海に造成した人工島も、深く掘ったら海水がでてくるから、ミサイルや、航空機などの堅固な掩体をつくることができない。舞台装置のようなもので、役に立たない。

 習近平主席をはじめ中国の指導部は、愚かだ。

 中国は海洋覇権を握ろうとして、大海軍を建設することによって、周辺諸国を威嚇しているために、かえって孤立化を招いている。大陸国家が大海軍を建造して、上手くゆくはずがない。それに、中国は陸上のことは理解しても、海については無知だ。

 中国が海軍力による海洋覇権を握ることを夢想することなく、尖閣諸島をはじめとして、小さな島嶼をめぐって無用な領土紛争を起すことなく、巨大な経済力を使って、周辺諸国と友好関係を結ぶことに努めたとしたら、アジアが北京に靡いたにちがいない。

 中国は習主席が「偉大な5000年の中華文明の復興」を呼号しているように、中国が世界の中心であると信じる、自己中心の中華思想によって、すっかり毒されている。中華文明が5000年も遡るというのは神話であって、科学的な根拠はない。

 このように、中国の為政者は自己中心であるために、他民族について理解しようとせず、そのような能力を欠いている。

 中国人には、自己陶酔する性癖がある。京劇は国劇と呼ばれているが、日本における歌舞伎と違って、中国人全員を酔わせる。

 中国人は打楽器などの耳を聾する音楽、頭の頂辺(てっぺん)からでる甲高い歌声、派手に立ち回る幻想的な空間によって、誰もが快感に浸る。歴代の中国皇帝から、西太后、毛沢東、周恩来、江沢民までが、京劇の虜となってきた。習主席も、例外でなかろう。

 中国人は昔から、「吃(食)喝(酒)嫖(淫らな遊女)賭(博打)去聴戯」を、生き甲斐にするといわれてきた。「去聴戯」は、京劇のことだ。

 習主席が訪米した時に、アメリカと太平洋を二分しようと提案して、冷笑を買ったが、海洋覇権を握ろうというのも、「去聴戯」だ。

 中国は“商人の国”で、臆病だから、全面戦争を戦おうとはしない。

 だが、政権が揺らぐ時には、軍事冒険を試みることによって、人民の人気を博そうとしよう。尖閣諸島を奪いにくる、危険が迫っている。


  現行憲法は、日本の悠久の歴史に根を降ろしてない
    Date : 2017/01/06 (Fri)
 11月23日は、いまでは「勤労感謝の日」という、英語から翻訳したような名で呼ばれる休日となっているが、正しくは「新嘗祭(にいなめさい)」である。

 1年を通して、この日だけ、天照大御神が日本に降臨される。

 皇居の賢所(かしこどころ)に降臨される。大御神が超近代都市の真ん中にある、緑が茂る皇居に降りてこられるのだ。
 新嘗祭に当たって、天皇陛下が皇居にある宮中三殿の賢所において、親しく祭祀を執り行わられる。大御神が降臨されると、陛下が新穀を皿に盛りつけられ、大御神におすすめして、共に召し上がられる。

 この時に用いられる皿は、柏(かしわ)の葉である。陛下がお使いになられる箸は、今日の近代的な2本棒の箸ではなく、竹を削いで火で炙って、ピンセット状にしたものだ。箸の原形といわれる。

 毎年、京都の石清水八幡宮の境内に群生する竹が献上されて、この大祭のために箸がつくられる。

 日本民族がまだ文字を持たなかった時に、発祥した祭なのだ。日本は古い、古い根をもった国である。

 「日本国憲法」と呼ばれている現行憲法は、昭和22年に発効してから、69年しかならない。69年といえば、日本の悠久の歴史のなかで、瞬(まばた)きする時間にしか当たらない。

 そのうえ、現行憲法は占領軍によって強要――「この憲法草案を受けいれなければ、天皇の一身の安全を保障できない」と威嚇されて、押しつけられたものだ。

 いったい主権を失っていた国が、憲法を制定できるものだろうか。

 日本国憲法の原文は、英語である。いったい一国の憲法の原文が、その国の国語によって起草されず、外国語で書かれていることがありうるものだろうか。

 この2つのことだけとっても、「日本国憲法」と呼ばれている現行憲法は、日本国の憲法として資格がない。

 根のない木はない。現行憲法は日本の2000年以上にわたる歴史に、根を降ろしていない。今日の日本は根のない木なのだ。

 いま、アメリカが超大国として世界秩序を支えるのに疲れ果てて、超大国の座から降りつつある。世界が混乱して、弱肉強食の時代に入ってゆこう。

 オバマ大統領が在職中に、「もはやアメリカは世界の警察官ではない」と述べたが、トランプ次期大統領も選挙中に同じ発言を行っている。

 いまこそ、日本は自立しなければならない。

 日本はアメリカによって保護されてきたのを、「平和憲法」によるものだと錯覚してきた。日本国民はアメリカによって与えられた属国憲法によって、自立精神をすっかり蝕まれてしまった。

 日本は現行憲法によって、根がない国となってしまった。根がない木は強風に耐えることができない。

 日本が倒木となってしまって、よいものか。

 現行憲法は第1章第1條で、天皇を「日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と規定しているが、天皇が日本を日本たらしめており、まさか、いま生きている国民がその地位におつけしているのではあるまい。


  日本は言葉によって支えられている ことばこそ生命だ
    Date : 2017/01/05 (Thu)
 読売新聞だった。12月1日付朝刊の大見出しを見て、今日の日本がもはや私が知っていた日本ではないのだと覚って、体から力が抜けてゆく思いを味わった。

 見出しは、「退位容認9人慎重7人 有識者会議年明け論点整理」というものだった。

 そのうえ、この記事のすぐわきに「デジタル教科書容認 紙が基本 20年度から小中高で」という、見出しがあった。

 「退位容認9人」――「容認」というのは、天皇陛下を目下にしているものだ。

 新聞の使命を再認識してほしい

 私は読売新聞と産経新聞を、保守派の新聞として購読しているが、読売新聞までもかと思って、落胆した。どうして編集局のなかで、誰も気付かなかったのだろうか。
 
 言葉は人と社会のありかたをつくる、もっとも強い力を持っている鋳型である。

 天皇を上からの目線で、見降ろすことがあれば、日本という国が溶解してしまう。読売新聞社の編集局には、おそらくそのような意図がまったくなかったにちがいない。そうだとしたら、もっと恐ろしいことだ。

 「有識者」は意味不明の言葉

 「有識者」という言葉も意味不明で、正体が分からない。その証拠に、私たちは日常会話のなかで特定の人を指して、「あの人は有識者です」ということがない。意味がないのだから、言葉といえないだろう。

 それなのに「有識者」という言葉が、大手を振って闊歩している。

 私もこれまで何回か、政府の諮問委員会に連なったり、「有識者」として意見を求められたことがある。それでいながら、私は自分に対して、「有識者」という言葉を説明することができなかった。

 かなり以前のことになるが、1回、2万円か、3万円か日当を支給されたことを、記憶している。すると「有識者」は、「政府から1回3万円貰って、意見を述べる人」と、定義するべきなのだろうか。

 天皇のありかたという、国家にとって重大事を、一握りの「有識者」の意見によって、決定してよいものだろうか。「年明け論点整理」というが、そんなに急ぐ必要があるものだろうか、と思う。

 「新嘗祭」の歴史と意義

 11月23日は、戦後の日本では「勤労感謝の日」と呼ばれる休日とされているが、正しくは秋の収穫に感謝する「新嘗祭(にいなめさい)」である。

 天照大御神が1年を通じて日本に降臨されて、天皇と共食される日が1日だけある。11月23日の新嘗祭だ。

 天皇は、皇居の宮中三殿の賢所(かしこどころ)に降臨された天照大御神をはじめとする神々に、お手づから箸を使われて、新穀を皿に盛りつけられておすすめし、召し上がられる。

 この時に用いられる皿は土器ではなく、柏の葉である。箸は2本の棒ではなく、竹を削いで、火で炙ってピンセット状にしたものであって、箸の原型といわれる。

 今年(平成28年)も、陛下は午後7時から賢所において、新嘗祭の「夕(よい)の儀」を執り行われた。

 柏の葉の皿と箸の原型

 陛下が御高齢になられたために、午後11時から翌朝の午前1時まで斎行される「暁(あかつき)の儀」については、一昨年(平成26年)から掌典長が代行してきた。掌典は天皇にお仕えする神官である。

 この祭典で、柏の葉の皿と、竹を炙ったピンセット状の箸が用いられているのは、日本という国が世界に類例がない、古い生い立ちを持っていることを、示している。

 日本を日本たらしめている祭祀

 超近代的都市である東京の真ん中に、緑の小島のように浮ぶ皇居のなかで、このような原始的な祭が行われている。

 天皇はお元気であれば、宮中三殿において年間20回あまりの祭祀を、親しく行われる。これこそが、日本を日本たらしめている祭である。

 ところが、これらの宮中祭祀は、現憲法のもとでは、天皇の「私事」として軽視されているために学校教育の場で、天皇が日本と世界の平和を真摯に祈られていることを、教えることができない。

 それにしても、「勤労感謝」という言葉は、アメリカ語を訳したようで、私たちの胸から遠い、遠いところにある。奇妙な名がついた休日である。日本では働くことは、欧米と違って常態であって、勤労に感謝するという発想がない。

 現行憲法は心を欠いている

 現行憲法の第1章第1条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と、規定している。こんな軽薄なことで、よいのだろうか。

 いま生きている日本国民が、日本の主権者だとされているが、いったい、日本はいま生きている国民だけのものなのだろうか? 日本はこれまで生きて、日本という国を築いてきた、全員のものであるべきだ。

 天皇はいま生きている、日本国民の統合の象徴であるだけではない。日本という国が生まれてから、今日まで日本を統合してきた精神の要であってきた。

 いまでは、「国民の祝日に関する法律」といって、占領下でアメリカ軍が「祭日」を否定したために、「祝祭日」という言葉がなくなった。

 根のない国籍不明な国から脱出しよう

 日本の伝統文化を捨てたために、クリスマスや、ハロウィーン、女性から男性にチョコレートを贈るバレンタインデーが、国民の祭になって、根のない国籍不明な国となっている。

 マスコミは日本と係わりがないクリスマスや、ハロウィーンや、バレンタインデーを大きく報道しても、新嘗祭を取り上げることがない。

 産経新聞に1ページ全面の「企画特集」として、「赤坂インターシティAIR、来年九月開業」という記事が、載っていた。

 「緑あふれる新ランドマーク」という、見出しがある。

 これが日本の首都なのか

 目を通したら、「東京都の外国企業誘致プロジェクト『アジアヘッドクオーター特区』‥‥」という書き出しで、「ディベロッパー」「リフレッシュ」「オフィスエントランス」「オフィスラウンジ」「フリーWi‐Fiスポット」「イベント」「コンファレンス」「メディカルモール」「マスダンパー」「ホーマット バイカウント」という外国語が、日本語の注釈なしに、目白押しに出てきた。

 これが日本なのだろうか? 私は赤坂の近くに住んでいるが、もう、こんなところには住みたくないと思って、慨嘆した。

 「赤坂インターシティAIR」とは、何の意味なのだろうか。「AIR」はカジノという賭博場を認めるIR法が、衆議院を通ったところなので、「アカサカアイアール」の略なのだろうか。

 きっと、海外からカジノ企業を誘致して、昼間から胴巻きに分厚い札束をぶちこんだ男たちが、血走った眼をして、鉄火場に出入りすることになるのだろう。いずれにせよ、カタカナの外国語ばかりによって埋めつくされた場所からは、遠ざかりたい。

 言語障害を患う人は、正常な日常生活を送ることができない。今日の日本は言語機能を損ねた人に、似ている。

 生半可な言葉を使うことによって、幼児化してゆく。日本は幼児化している。

 民族の自分の言葉は生命なり

 歴史を振り返れば、民族は自分の言葉を失うなかで力を失い、ついに亡びることを教えている。

 先月、地方を訪れたが、地元の「文化振興協会」の役員から、「国際化に対応して、文化の振興に努めています」と、聞かされた。

 私は「文化振興」という言葉が、欧米に存在しないことに気付いた。西洋列強の脅威に対抗して近代国家を建設した、明治の「文明開化」が生んだ言葉にちがいないが、そろそろ日本文化に自信を持ってよいのではないか。


  国民と自衛隊を遠ざける「言葉狩り」
    Date : 2016/12/21 (Wed)
 世界が流動化している。平和“無抵抗”憲法を改正すべきだが、時間の余裕がない。日本を守るために、国防力を強化すべきだ。

 今年の最大のニュースといったら、トランプ氏が米国大統領として当選したことだろう。

 “暴言王”の勝因の一つが、歯に衣(きぬ)を着せずに乱暴な言葉を連発したことだった。

 アメリカで知識階級が「ポリティカル・コレクトネス(PC)」という言葉狩りを行ってきたのに、大衆がうんざりしていた。

 この40年ほど、マンというと女性蔑視だから、チェアマン(議長)をチェアパーソンと言い替えるなど、多くの常用語が使えなくなったが、このところミスター、ミセス、ミスは同性愛者、性同一性障害者に対する差別だから、Mx(ミックス)と呼べとか、今年、オバマ大統領が「自分がそう思う性別によって、男女どちらのトイレを使ってもよい」という大統領令を発したために、国論を二分した。

 日本でも、バカバカしい言葉狩りが罷(まか)り通ってきた。警察庁が婦人警察官の「婦」が差別だといって、「女性警察官」に改めた。家のなかを掃く帚(ほうき)は、女性の心の延長だった。電気掃除機とか家電製品は、すべて心を省く器械ではないか。

 日本の言葉狩りは、米国よりはるかに酷い。

 稲田防衛大臣が「防衛費」を「軍事費」といったら、国会で叩かれた。だが、巷(ちまた)で庶民が防衛費を軍事費といっても、咎(とが)められまい。

 自衛隊に「普通科連隊」「特科連隊」があるが、一般国民には何のことやら分からない。「普通科」は歩兵、「特科」は砲兵だが、言葉狩りで「兵」というのを禁じているからだ。

 自衛隊の階級で「一士」は旧軍の上等兵、「一佐」は大佐に当たる。自衛隊は判じ物――文字に隠された意味を当てる謎解き――の言葉だらけだ。

 国防は国家の大事だ。だが、「普通科」「特科」「一士」「一佐」といっていたら、国民が自衛隊を身近に感じるはずがない。

 防衛費が軍事費で、なぜいけないのか。国防も「安全保障」といい替えられている。

 国を海外からの脅威から守るためには、国民と自衛隊が一体でなければならない。

 日本国憲法は、海外の厳しい現実を見失わせるが、言葉狩りが自衛隊を国民から遠ざけている。

 憲法を改めなくても、自衛隊の用語を正すことができる。大急ぎで改めよう。


  力しか信じないロシア
    Date : 2016/12/20 (Tue)
 プチン大統領が来日して、2日にわたる日ロ首脳会談が行われた。

 日本側はプチン大統領の決断によって、ロシアが北方領土について譲歩することを期待してきたが、やはり厚い壁を破れなかった。

 ロシアは戦争によって奪った領土は、自分のものと舌舐(なめずり)しているが、泥棒猫に説法するようなものだ。

 日ロの文化は、水と油のように異なる。

 私は4月に晩餐会で、アファナシェフ駐日ロシア大使と隣席した。プチン大統領がシリアを爆撃したパイロットに勲章を授ける映像を、テレビで見た後だったので、話題にしたところ、「わが国では勲章を貰ったら、ウォッカをなみなみとついだグラスにポトンと落し、一気飲みするのがマナーです」といった。気が荒い人々だ。

 ロシアの夏は短い。麦の収穫を慌てて、大急ぎですまさねばならない。細かいことに構っていられないから、繊細さを欠いている。

 ロシア人は力しか、信じない。ロシアは9世紀の小さなキエフ公国が、今日の世界最大の領土を持つまで膨張したから、国境という概念がない。この点、中国と共通している。

 「偉大なるロシア」という言葉が、ロシア人を酔わせる。中国人が習近平国家主席の「偉大なる5000年の中華文明の復興」という呼び掛けに、振い立つのとよく似ている。

 プチン大統領は「冷戦によって、ソ連が解体したのが、20世紀の世界の最大の悲劇だ」と公言している。まだ冷戦時代に生きているのだ。毛沢東以来中国の最高指導者が、中華大帝国の復興を夢みてきたのと、変わらない。

 毎年、プチン大統領は筋肉隆々の上半身を誇示した、カレンダーを発売してきたが、ドーピングに用いられる筋肉増強剤の成長ホルモン(HGH)と、男性ホルモン剤のステロイドを注射しているという、噂があった。

 ロシア選手団が昨夏のリオ五輪大会からドーピングのために締め出されたから、私は来年のプチン大統領のカレンダーから、裸の上半身の写真が消えるだろうと思ったが、その通りになった。

 ドーピングすると気持ちが高揚するが、ボディビルに打ち込む者は、自己愛に溺れるナルシストが多い。プチン大統領もその一人だ。

 ロシアは先端兵器をつくれても、消費材は何一つつくれない。石油、天然ガス、金、ダイヤモンドなどの採集経済に依存する縄文時代の国だ。ロシアはどこへ向かうのだろうか。


  サウジ崩壊危機の影響は
    Date : 2016/12/19 (Mon)
 日本の国力は、電力によって支えられている。

 砂漠と、ナツメヤシとラクダと、石油が噴出する国々が集中するアラビア半島に、日本のエネルギーの80%以上を依存している。

 シリアはアラビア半島のわきにあるが、イスラム国(IS)と、米ロ、英仏、シリアのアサド政権、反体制派、トルコ、イラク、イラン、レバノンのヒズボラ、クルド族などの国や、諸派の軍や民兵が入り乱れて、死闘を繰りひろげている。出口が見えない。

 私はワシントンを訪れて、安全保障の関係者に「中国とサウジアラビアのどちらが先に崩壊するか、賭けをしよう」というが、賭けが成立しない。全員が私と同意見で、「サウジアラビアだ」と答える。

 サウジアラビアにイスラム国の無気味な黒い旗が翻る可能性は、かなり高いものがある。

 イスラム国は、イスラム原理主義のイデオロギーだ。イデオロギーはいくら爆撃してみても、粉砕できない。

 もし、サウジアラビアが崩壊して、アラビア半島が混乱に陥れば、日本は原発の稼働を停めているから電力が停まって、“蛍の光、窓の雪”の生活を強いられることになる。

 サウジアラビアと中国は、3000万人対14億人と人口こそ違うが、双生児(ふたご)のように、よく似ている。

 中国は習近平国家主席をはじめ、300のファミリーが支配している。サウジアラビアは数えかたによるが、3000のプリンスのファミリーが支配している。両国とも政治、集会、言論、表現の自由がまったくない警察国家だ。

 サウジアラビアは反目する多部族から構成されているが、これまで潤沢な原油収入によって、家賃から光熱費、水道料、医療費、教育までタダという、バラ撒きによって、国内不満を抑えていた。

 原油価格の暴落を受けて、政府は脱石油による経済大改革を試みているものの、もはや手遅れだ。原油高価格という“黄金の杖”を失ない、社会不安が増大している。

 中国も社会安定を、右肩上がりの経済成長に頼ってきたが、魔法の杖を失ってしまっている。我武者羅な経済運営が破綻して、体制が大きく揺らごうとしている。

 おそらくトランプ政権はシリアをアサド政権を援けるロシアに委ねて、手を引き、イスラエルと結び、エジプトを守ることにしよう。

 さて、日本はどうする?


  米に働きかけ北朝鮮を核武装国家と認めさせるべきだ
    Date : 2016/12/15 (Thu)
 日本にとって、北朝鮮が差し当たって、最大の脅威だ。中国ではない。

 中国は長期的な脅威だが、トランプ政権の出かたを窺っているから、ここしばらくは日米同盟を強化することによって、抑え込むことができよう。

 私は10月にワシントンを訪れた時に、国防省の関係者に、「オバマ大統領はどうかしている。北朝鮮が5回目の核実験を行ったというのに、北朝鮮が核武装国家だと認めることを拒んでいる。そのかたわら、国連というカフェで北の暴挙だとか、経済制裁を強化するというお茶飲み話に耽っている」といった。

 米朝間にも、南北朝鮮間、日朝間にも話し合いがまったくなく、北朝鮮を目隠し状況に置いている。戦争は疑心暗鬼と、誤算から起るものだ。

 北朝鮮が核兵器開発を進めてきたのは、金一族体制を核なしに、守れないと確信しており、日本や、アメリカを「火の海」とすることは望んでいない。

 日本はトランプ新政権に働きかけて、まず北朝鮮を核武装国家として認め、日米が北と交渉して、北の核弾頭数とミサイルの射程距離を制限するのと引き替えに、米朝平和条約と日朝国交を結んで、日本は1965年の日韓国交樹立時のような経済協力を行う。

 ミサイルの射程は、九州から南北軍事境界線までが500キロだから、それ以下とする。金正恩委員長以下、北の体制の安泰が保障されるから、大喜びして受け容れよう。拉致被害者全員が帰国して、朝鮮半島に平和秩序が確立される。

 北は韓国が日本のカネで、1965年から“漢江の奇蹟”を行ったように、ピョンヤンを流れる“大同江(テドンガン)の奇蹟”を実現するから、十数年は親日国家となり、韓国は反日を唱えられなくなる。

 中国は図体は大きいが臆病だから、全面戦争はたたかわない。「軟土深掘(やわらかい土を掘れ)」を信条として、もっぱら弱いところに力を伸ばそうとする。

 中国は何とか日本を挑発して、尖閣諸島を奪いたい。武装漁民を上陸させ、日本が警官隊で対応できずに自衛隊を繰りだしたら、人民解放軍が襲いかかる筋書きを描いていよう。

 日本として尖閣諸島に海洋生物研究所を置いて、欧米の学者も招いて、海上保安官を用心棒として駐屯させる。中国は怒ろうが、軍事衝突のリスクのほうが、はるかに恐ろしい。


- Mag Board -