加瀬英明のコラム
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  「日本を守るのは誰か」という特集の意味するもの
    Date : 2016/05/24 (Tue)
 これから、いったい日本がどうなるのか、暗然とせざるをえなかった。

 今日の日本の保守論壇をリードする、月刊誌『正論』6月号の特集のタイトルを新聞広告で見て、あらためて狼狽(うろた)えた。

 「総力特集 迷走するアメリカ 日本を守るのは誰か」というものだった。

 5月はじめに、アメリカ・インディアナ州の予備選挙で、ドナルド・トランプが共和党の大統領候補として指名されることが、ほぼ確定した。

 そのかたわら、民主党はインディアナ州で、バーニー・サンダース上院議員が勝った。ヒラリー・クリントン夫人の優位は動かないものの、サンダースが善戦したことによって、11月に誰が大統領となっても、トランプ、サンダースの主張が来年からアメリカの進路に大きな影響を及ぼすことになる。

 “トランプ現象”とは、何か。1980年にロナルド・レーガンが大統領を目指して、予備選挙に挑んだ時に、カリフォルニア州知事をつとめたことがあったものの、俳優あがりのシロウトでしかないと嘲けられた。

 レーガンは「アメリカに朝を招こう(モーニング・イン・アメリカ)」と、呼びかけた。レーガンが楽観主義者(オプティミスト)であるのに対して、トランプは悲観主義者(ペシミスト)だ。

 私は1ヶ月前にCNNのニュースで、トランプが集会で演説するのをみた。トランプは、こう訴えていた。

 「アメリカは数百億ドルも投じて、イラクにつぎつぎと新しい小学校を造ってきたが、造るごとにテロリストによって、破壊されてきた。そのかたわら、(マンハッタンの隣りにある)ブルックリンでは、小学校の校舎が老朽化して、われわれの子供たちの生命を危険にさらしている。もはやアメリカは、豊かな国ではない。アメリカの力を、アメリカのなかで使おう」

 サンダースはアメリカをスウェーデンや、デンマーク型の福祉国家につくり変えようとしている。若い男女の圧倒的な支持を、獲得している。

 アメリカのヨーロッパ化が、始まっているのだ。

 かつてヨーロッパは、世界の覇権を握っていた。しかし、その重荷を担うのに疲れ果てて、内に籠るようになった。

 日本は昭和27(1952)年に、サンフランシスコ講和条約が発効して、独立を回復して以来、“吉田ドクトリン”のもとで、国家の基本である国防を、アメリカに委ねて、経済を優先させる富国強兵ならぬ、富国弱兵の道をたどってきた。

 これは、日本国憲法、あるいは平和憲法踏線と呼ぶものだった。自衛隊はいまだに心もとない、擬い物の軍隊でしかない。国軍を欠く国家は、擬い物の国家でしかない。

 アメリカにひたすら縋(すが)ってきたというのに、そのアメリカが迷走をはじめた。それよりも、日本が独立を回復してから、平和憲法という偽物憲法を柱として恃(たの)んで、日本が迷走してきたのではないのか。

 それにしても、アメリカは3億人以上の人口を抱えているというのに、ヒラリーとトランプの2人しか、大統領候補者がいないのは、どういうことなのか。

 マスコミが政治家を興味本位から、異性関係をはじめとして一挙一動を、24時間中、監視するために、まともな人は政治家を志さない。日本でも同じことが起っている。


  風前の灯となった日米運命共同体路線
    Date : 2016/05/16 (Mon)
 天下大乱が始まった。2016年に入ってから、世界が一変した。

 中国とロシアが勝手気儘に振舞っている。アメリカも、深く病んでいる。中東が溶解しつつある。

 中国という巨龍が病んで、東シナ海と南シナ海に飛沫をあげて、のたうちまわっている。

 中国は天の恵みだった高度成長が終わって、経済が出口がない袋小路にはまっている。中国共産党による体制が、ケ小平以来の高度経済成長という天命を失って、揺らいでいる。

 習近平主席は人民の関心をそらすために、「5000年の偉大な中華文明の復興」を煽るかたわら、「戦争の準備を進めよ」と訴えながら軍拡を進め、南シナ海の人工島や、占拠した島嶼を軍事化している。

 ロシアも原油価格が暴落して、よろめいている。

 プチン大統領が1期目を始めた2000年から原油価格が高騰し、8年後に2期目を終えるまで、天の恵みが続いた。

 2013年に3期目が始まったが、一昨年から原油価格が急落して、昨年末に20ドル台まで落ちた。

 ロシアという大鷲も、病んでいる。ルーブルが暴落し、庶民生活を圧迫している。プチン大統領はウクライナのクリミア、ウクライナの東部、シリアに軍事力を用いて、国民の関心を外へ向けている。

 ロシア国民の大多数は、25年前にソ連が崩壊した時から、ロシアがそうだったグローバルパワーの地位を取り戻したいと、願ってきたから、喝采した。

 プチン大統領の人気は、対外的な勝利によって、まだ高いものの、いつまで続くものか。

 オバマ政権の7年間のうちに、アメリカは世界の平和秩序を支えるのに疲れ果てて、「パックス・アメリカーナ」(アメリカの力による世界平和)が、破綻した。

 アメリカでは、今年11月の大統領選挙へ向けて、全米で民主、共和両党の候補を選ぶ予備選挙が進んでいるが、両党とも2人のまったく意外な候補者が、党の体制を大きく揺さぶっている。

 東京・霞ヶ関の外務省では、毎朝、省員が登庁すると、全員が跪(ひざまず)いて、ヒラリー夫人の勝利を祈っていると、いわれる。ヒラリー夫人はオバマ政権の国務長官をつとめたから、日本国憲法が日本に課している特殊な制約を、よく知ってくれているはずだからだ。

 夫人のアジア外交のアドバイザーは、日本担当の国務次官補だったロバート・キャンベルだが、外務省が飼い馴らしてきたから、安心できるという。

 トランプが大統領となったら、たいへんだ。

 ヨーロッパを守ってきたNATO(北大西洋条約)を解消し、中東を見離すかたわら、韓国と日本からアメリカ軍を引き揚げろと、主張している。

 日本だけ甘やかして、アメリカが日本を守ることを約束しているものの、日本はアメリカを守る義務がない日米安保条約を再交渉して、どの国とも結んでいる共同防衛条約にせよと、叫んでいる。

 トランプの登場は、日本にとって驚天動地のことだ。アメリカはいまや貧しい国になったから、外国を守るよりも、アメリカを再建するためにカネを使え、というのだ。

 民主党でヒラリー夫人と鍔迫(つばぜ)り合いを行っているサンダース上院議員は、北ヨーロッパ型の福祉社会をつくることを、目指している。やはり国防費を大きく削って、国内に振り向けようと、主張している。

 誰が大統領候補となったとしても、トランプ、サンダースの支持者票を取り込むために、2人の主張に歩み寄らざるをえない。

 アメリカ鷲(アメリカン・イーグル)も、病んでいる。中国、ロシア、アメリカが、手負いの大国となっている。

 日本はもはやアメリカに縋って、運命を委ねることができない。そこで、自立することを強いられることになる。


  日本人は日本について、もっとよく勉強してほしい
    Date : 2016/05/09 (Mon)
 3月に、日本人が委員長をつとめる国連女性差別撤廃委員会が、日本を糾弾する報告書を発表した。

 あいも変わらず、日本が十数万人かの無辜の娘たちを拉致して、軍の「性奴隷(セックス・スレイブ)」として凌辱したと、非難した。

 外務省が推薦した結果

 これも、外務省の多年にわたる職務怠慢が、招いたことだ。

 この怪しげな委員会は、同じ報告書のなかで、日本の男系による皇位継承が、女性に対する差別だといって批判したが、さすがに外務省も強く抗議したために、削除された。

 皇位の男系による継承は、2000年以上にわたって続いてきた、日本の文化である。イギリスの王位継承も、男子が優先されている。委員会は男しかローマ法王になれない、カトリック教会をなぜ非難しないのだろうか。

 この委員会の委員長は、福田康夫内閣当時に、外務省が国連に推薦して、就任した日本人女性弁護士で、政府の男女共同参画会議の推進役をつとめていた。

 外交は国家の重大時であって、外務省に任せておくことはできない。

 日本は長い歴史を通じて、奴隷制度が存在しなかった。この点でも、世界のなかで珍しい国である。

 日本民族の和の心は世界の手本である

 日本民族は、何よりも人のあいだの和を重んじている。争いや、諍(いさか)うことを嫌う。やさしい心の文化である。

 宦官を例にとろう。日本には、宦官もいなかった。西洋崇拝癖のある、心ない日本人にそういうと驚くが、ヨーロッパには宦官制度が、カトリック教会が1879(明治12)年に廃止するまで、存在していた。

 中国には、宦官が清朝が倒れた辛亥(しんがい)革命の1911年、朝鮮は1910年の日韓併合までいた。

 私はアメリカの大学に、1950年代末に留学した。

 その時に、アメリカで連邦政府が1936年から3年を費やして、歴史史料として多数の奴隷の生存者たちの聴き取り調査を行った報告書が、存在していることを知った。

 人が人を奴隷とするのは非人道だ

 この記録は、『奴隷の証言 元奴隷との対話によるアメリカ合衆国における奴隷の民俗史』(Slave Narratives: A Folk History of Slavery in the United States from Interviews with Former Slaves.)と題して、1941年までに全17巻にのぼる記録が、刊行されている。

 私はアメリカで、1865年まで奴隷制度が行われていたことを、頭のなかのどこかで承知していたが、1936(昭和11)年生れなので、1936年にまだ多くの奴隷体験者が生きていたことを知って、ごく最近まで、アメリカに奴隷制度が存在していたのだと、心に刻まれた。

 報告書を図書館で、何巻か拾い読みしたが、2300人の元奴隷による証言を集めたもので、むごい内容だった。アメリカのおぞましさを、あらためて知った。

 1936年には、多くの奴隷体験者が生存していたのだった。

 アメリカにおける奴隷制度の廃止

 アメリカが憲法を改正することによって、奴隷制度を廃止したのは、1865(慶応元)年のことだった。明治元年の3年前に当たる。子供も奴隷として扱われて、7、8歳になると、家畜と同じように農園で鞭打たれながら、綿花摘みに酷使され、また売り買いされた。

 日本は隣の中国や、朝鮮から、進んだ文物を学んだが、奴隷制度を模倣することがなかった。だから、近代に入ってから、“性奴隷”などがいるはずが、ないではないか。

 慰安婦問題の記者会見

 私は昨年2月に、東京・有楽町の日本外国特派員協会(通称プレスクラブ)から招かれて、慰安婦問題について記者会見を行った。

 プレスクラブは、反日の外国記者たちの巣窟である。

 外務省のすぐ膝元にあるというのに、どうしたことか。広報課員がこれらの外国記者と親しく酒を酌みながら、日本の正しい姿を伝える努力をしないのだろうか。

 性奴隷は存在しなかったとの主張に対する反応

 記者会見では、私が「性奴隷などいなかった」と説明したうえで、質疑応答に入った。

 まず、アメリカの記者が手をあげた。所属の新聞名を名乗ったうえで、「あなたは性奴隷がいなかったと述べたが、日本が20万人以上にのぼる無辜の娘たちを拉致して、性奴隷としたことは、国際的な常識となっている。あなたは国際常識に逆らっているが、恥しくないのか」と、詰め寄った。

 私は「日本には歴史を通じて、奴隷制度が一度も存在しなかった。アメリカが奴隷制度を廃止したのは、つい最近の1865年のことだ。そのような国の者から、そのような質問を聞きたくない。もっと日本について、勉強しなさい」といった。

 会見にでていた数人の日本人記者から、拍手が起った。

 私は溜飲をさげた。私はついでに、「日本では歴史を通じて、一度も大虐殺が行ったことがない。アメリカは大量のインデアンを、虐殺したではないか。アメリカと同じような国だと、間違って思わないでほしい」と、つけ加えた。

 日本は他の諸国と違って、歴史を通じて人種差別を行ったこともない。日本列島に渡ってきた、さまざまな人種が和して、この国をつくってきた。

 「八紘一宇」の意味を問う

 やはり昨年のことだったが、自民党の三原じゅん子参議院議員が、参院予算委員会において、「世界が八紘一宇の理念のもとで、一つの家族になって、助け合える経済を実現するべきだ」と、発言した。

 すると、朝日新聞が「戦時中のスローガンを使った」と詰(なじ)り、毎日新聞が「戦意活用のスローガン『八紘一宇』」を持ち出したといって追及したのをはじめ、新聞や、テレビや、ネットが非難した。

 「八紘一宇」は、『日本書紀』(西暦720年)のなかで、初代天皇である神武天皇の詔(みことのり)にでてくる言葉であって、「八紘(世界)を一つの屋根の下に置いて、家族として睦み合い、一つの宇(家)とせよ」という意味である。そこで「戦時中のスローガン」とか、「戦意昂揚のスローガン」だといって非難するのなら、『日本書紀』がけしからんと、いうべきではないか。

 パラオご訪問の天皇皇后両陛下の誠

 昨年、天皇皇后両陛下が、パラオ諸島を行幸啓された。

 パラオ共和国の国民が総出になって、日の丸の小旗を振って、両陛下を歓迎した。両陛下は行かれるところ、日の丸の小旗の波のなかを進まれた。

 しかし、パラオ諸島が日本の統治下にあったのは、第一次大戦が終結してから、24年しかなかった。

 そのうえ、パラオ諸島は日米両軍の激戦地となった。アメリカ軍が来攻する前に、ペリリュー、アンガウル両島の島民を避難させていたが、島民は家財産を失い、避難した者も、他の島々の島民も、アメリカ軍の砲爆撃によって、家財を焼かれるか、犠牲になった。

 それにもかかわらず、パラオ国民は日本時代を懐かしんで、日本に強い親しみをいだいている。

 福沢諭吉・立国は公にあらず私なり

 パラオ諸島はスペイン、ドイツ、アメリカによって統治されたが、ヨーロッパ人も、アメリカ人も、島民を蔑(さげす)んで、差別したのに対して、日本人は対等に接して、水道、電気のインフラを整備し、小学校、専門学校を建て、産業を興したから、親しまれている。

 ちなみに、東京裁判で「八紘一宇」が問題になった。判決文は朝日、毎日新聞に気の毒だが、「全世界に普遍的な人道の原理以上の何ものでもなかった」と、述べている。

 先の国連委員会の報告書は、国連が悪いのではない。日本人が悪いのだ。

 日本人は日本について、もっとよく勉強してほしい。自分の国ではないか。


  ロシア、中国に異変あり アメリカに運命を委ねるな
    Date : 2016/04/22 (Fri)
 プチン大統領がシリアへ派遣していた、ロシア空軍機を撤収した。

 凱旋したパイロットたちは、群衆から大歓迎を受けた。テレビのニュースを見ていたら、プチン大統領が何人かのパイロットに、親しく勲章を授ける映像がでてきた。

 3月なかばに、私は晩餐会で駐日ロシア大使の隣席となった。大使からロシアでは、ナポレオン戦争のころから勲章を授与されると、ウォッカをなみなみと注いだグラスに、貰ったばかりの勲章を落して、ウォッカを一気に飲み干すのが、今日でも習慣となっていると、教えられた。

 プチン大統領は必要があれば、撤収した空軍部隊は、数時間以内にシリアへ戻すことができると、語った。

 プチン大統領はウクライナのクリミアにしろ、シリアにしろ、必要があれば、軍事力を用いることを、示した。ロシア国民の大多数は、ソ連が崩壊した時から、ロシアがそうだった、グローバルパワーの地位を取り戻したいと願ってきたから、喝采した。

 それに、シリア内戦は大量の難民がヨーロッパに押し寄せることによって、ロシア国民がロシアを圧迫しているとみているNATO(北大西洋条約機構)ヨーロッパ諸国の箍(たが)を、がたがたにしているから快哉を叫んでいる。

 というものの、ロシアは原油価格が暴落したために、よろめいている。プチン大統領が1期目を始めた2000年から原油価格が高騰し、8年後に2期目を終えるまで、天の恵みが続いた。2013年に3期目が始まった。

 一昨年から、原油価格が急落した。私は昨年、「もし原油価格がプチン大統領の年齢を割ったら、プチン時代の終わりが始まろう」といったが、年末に20ドル台まで落ちた。

 昨年、ロシア経済の成長率はマイナス4%に落ちた。ルーブルが暴落し、庶民生活を圧迫している。それでも、プチン大統領の人気は、対外的な勝利によって高いものの、いつまで続くだろうか。

 中国も経済が出口がない袋小路に、はまっている。天の恵みだった高度成長が終わった。

 習近平主席は人民の関心をそらすために、「5000年の偉大な中華文明の復興」を煽り、「戦争の準備を進めよ」と訴えている。

 この10年間、何と世界のありかたが、大きく変わってしまったことだろうか。

 私はこの新年に、テレビ番組に招かれて、アメリカの大統領選挙の行方が話題となった。

 私は「1つ、朗報があります」と、いった。

 「2008年にオバマ大統領が初めて当選した年にも、再選を果した4年前も、新年のこの番組に出演しました。アメリカで、翌月から大統領候補を選ぶ予備選挙が、始まろうとしていました。

 そのつど、『誰が大統領になったら、日本にとって望ましいか』とたずねられて、『そんなことが話題になるのは、恥しいことに世界のなかで、日本だけだ』と、答えました。今年ははじめて、そんなことが話題になっていません。すがすがしいですね」と述べた。

 他の先進国において、アメリカの大統領選挙のたびに、誰が当選したらその国のためになるか、問われることはない。
誰がなったとしても、それなりに対応すればよいことを、知っているからだ。

 日本においてアメリカに運命を委ねることが、もはやできないから、自立しなければならない、という認識がひろまっているのだ。


  日本の憲法成立の実情 これは独立なき供与である
    Date : 2016/04/21 (Thu)
 敗戦のすぐ翌年に、マッカーサー総司令部の25人の部員が、日本国憲法案を僅か7日間でつくった。

 なかの1人のユダヤ人青年が、「法律の専門家を加えてほしい」と求めたところ、その場で外された。

 部員は全員がズブのシロウトで、憲法はおろか、法律の専門家が1人もいなかった。

 そのうえで、ホイットニー少将が日本国憲法案を東京白金(しろかね)の外相公邸で、吉田茂外相に手交して、「日本政府がこの原案を呑まなければ、天皇の一身の安全を、保障することができない」といって、威嚇した。

 ホイットニーの回想録

 ホイットニーは回想録のなかで、「吉田は目を通すと、顔色がたちまち黒い雲によって包まれたように変わった」と、記している。

 日本の憲法であるはずなのに、大急ぎで原案を日本語に慌てて訳したために、何よりも恥ずかしいことに、日本語が誤っている。

 日本国憲法の前文を、読んでいただきたい。

 「われらとわれらの子孫」は何を指すのか

 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、この憲法を確定する」と、始まっている。

 翻訳調だ。何と長たらしく、読みづらいものか。

 このなかの「われらとわれら」は、いったい、誰を指しているのだろうか?

 仮に「太郎と花子は自転車に乗って、われわれのために菓子を買いに行った」という文章があったとしよう。「われわれ」が太郎と花子を指していないことは、明らかである。

 日本国憲法の前文にある「われら」が、日本国民であるはずがない。ところが、前文を最後まで読んでも、「われらとわれらの子孫」が、いったい誰なのか、説明がない。

 まるで、誰かがどこか陰に隠れているようで、不気味だ。

 平和を愛する諸国民の実情

 「われら」が誰なのか、さっぱり分からないから、日本語として意味をなしていない。

 さらに、前文に「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という、文言がある。

 この「われら」も、日本国民でありえない。

 憲法の制定の経緯からいって、「われら」というのは、連合国の国民のことなのだろうか。「アメリカ国民とその子孫のために」と読むと、よく理解することができる。

 かりに、中学校の公民の授業中に、生徒が手を挙げて、「センセー! この前文のなかに、『日本国民はわれらとわれらの子孫のために』と書いてありますが、この『われら』とは、いったい誰のことなのでしようか?」と質問したら、どうなるか。答えにつまって、立ち往生するにちがいない。

 主語をきちんと定めると明快

 日本国憲法の原文は、英語だ。原文で読むと、きわめて明快だ。「We, the Japanese people‥‥」といって、始まっている。

 「われら日本国民は‥‥われらとわれらの子孫のために」と訳すればよかったが、それではあまりにも翻訳臭が強くなってしまうので、きっと出だしの「われら」を、省いてしまったのだろう。だが、「日本国民」の上に「われら」を入れなければ、英文和訳の答案だったら、落第である。

 せめて、憲法は正しい日本語で、書いてもらいたい。憲法の前文が判じものであるのは、日本の尊厳にかかわることだ。

 この他にも、現憲法には衆参両院の選挙とも、「総選挙」と定めているのをはじめ、誤まりが多い。

 このような憲法を、まるで御神体のように崇めているのは、異常なことだ。

 憲法がいい加減だから、戦後の日本は何ごとについても、真剣味を欠いた国となってしまったのだろう。

 独立国とは何か

 もし、日本が国家であるならば、自分の手で作った憲法を、持たなければならない。

 占領下の日本は、自国の国旗を掲げることすら、許されなかった。

 日本だけに「自主憲法」という言葉がある。このような言葉は、世界に他に存在しない。

 敗戦の翌年3月に、閣議が憲法改正政府草案を承認したときの模様が、幣原内閣の厚生大臣で、のちに首相となった芦田均氏の日記に、描かれている。

「閣議終了の直前、幣原首相は特に発言を求め、次のようにいわれた。『かような憲法草案を受諾することは、極めて重大な責任である。おそらく、子々孫々に至るまでの責任であろうと思う。この案を発表すれば、一部の者は喝采するであろうが、また一部の者は沈黙を守るであろう。しかし、深く心中、われらの態度に対して憤激を抱くに違いない』閣僚の中には、涙をふいたものが多かった。」

 現憲法は涙のなかに、成立した。

 アメリカの意図は明白

 アメリカは日本を従属させるために、憲法によって日本を完全に非武装化した。ある国を属領とする時には、まず国防権を奪う。

 「日本国憲法」は制定されてから、もう70年にわたって、日本に居座っている。

 人間生活では、あらゆるものが相対的なものであって、流動している。したがって、人が状況に合わせてゆかねばならない。憲法も生活の道具の1つでしかない。

 日本人は素早く動くことが、苦手なのだ。

 私は日本が“座る文化”であるのに対して、ユダヤ・キリスト・イスラム社会が“動く文化”だということが、その裏にあると思う。

 ユダヤ教からキリスト教が生まれ、ユダヤ・キリスト教の母胎から、さらにイスラム教が生まれた。

 日本には、「神が鎮まっている」という言葉がある。日本の神は静的なのだ。

 神の「鎮座」の意味

 神が「鎮まる」という表現は、日本だけのものだ。日本では神は「鎮座」しているが、ユダヤ・キリスト・イスラムの神は、能動的な神だ。

 西洋の神は、ギリシア語で「空気」「息」を意味する、「プノイマ」だといわれる。一ヶ所に留まることがなく、風のようにつねに動いている。「ダイナミック」の語源は、ギリシャ神話の神の一つである、「デュナミス」に発している。

 日本には「座」という、言葉がある。「社長の座」から、「妻の座」まである。みな、それぞれ自分の「座」を持っていて、その座に対して敬意が払われる。社長も、妻も、その座から動くことなく、そこに鎮まっているという、考えかたがある。

 日本ではトップに立つ者は、動かなくてもよいという考えが、強かった。頂点に“立つ者”というより、“座る者”といったほうがよかろう。

 社長の座とか、妻の座とか言われるが、座に据(す)えられた人よりも、座のほうに値打ちがある。

 私の仕事場に、ときどき約束なしに、「ちょっと、そこまで参りましたので、ご挨拶にお寄りしました」といって、現われる人がいる。突然こられて、困ることもある。

 確めないで訪問するのは、相手がかならずその座にいることを、前提としているにちがいない。日本は「座る文化」なのだ。名刺か、菓子箱を置いてゆくが、座に対する供え物なのだろう。

 日本国憲法の公布がもたらすもの

 日本国憲法が公布されてから、世界の大部分の国が憲法を何回も改めている。

 日本人は動かない静的なものに対して、憧れを抱いている。

 この意味では、日本国憲法は天皇制に似るようにすらなっている。いつの間にか、現憲法は天皇制に近い力を持つようになってしまった。


  われわれ夫婦は毎日が結婚記念日
    Date : 2016/04/18 (Mon)
 このところ、どこへ行っても、中年も若者も、座っていても、立っていても、歩いていても、いつも腰を屈めている。

 男も女も、スマホを握っている。恐ろしいことに、日本列島が160万年前に戻ってしまったのだ。

 今から160万年前に、猿人がはじめて直立して、人類であるピテカントロプス・エレクトゥスが誕生した。

 人間を猿から分ける、もっとも大きな特徴といえば、屈んでいるか、直立していることだ。

 スマホを凝視している男女は、猿に戻ったにちがいない。
指先を脇目も振らずに動かしているのは、蚤をとっているにちがいない。

 私は街に公衆電話がなくなってから、携帯をこちらから掛ける時だけ、使っている。

 私は美空ひばりや、コロンビア・ローズをききながら育った世代だが、これまで人生を1日か、1ヶ月を単位にして生きてきた。

 ところが、私は時代に大きく遅れて、取り残されてしまったようだ。スマホを手にしている男女は、数分ごとに関心がつぎつぎと移ってゆくから、一分(いっぷん)単位で生きている。

 注意持続力が、数分しかもたない人間の時代が、はじめて到来したのだ。

 だから、何ごとであれ、あらゆるものを粗末にする。人と人とのあいだの絆も、生まれない。

 言葉も、そうだ。そのよい例の1つが、「認知症」だ。「呆け」とか「痴呆症」というと、差別語になるからといって、「認知症」にしたという。

 だが、民法では婚姻外の男女に生まれた子を実子として認めて、親子関係とすることを、認知という。非嫡出子を実子として認めるのは、厳粛な行為だ。痴呆症、いや認知症と一緒にしてほしくない。

 しばらく前に、警察庁が「婦人警官」「婦警(ふけい)」の婦が女性を蔑視しているといって、「女性警察官」「女警(じょけい)」と言い替えた。

 女性が帚(ほうき)を持っているから、蔑んでいるというのだ。私は幼い時から、母が箒を手にして、心をこめて掃除しているのを見て、帚が母の心の延長なのだと思ってきた。

 ついこのあいだまでは、毎朝、家を出ると、路面に清々(すがすが)しい箒目(ほうきめ)があった。路地は舗装されていなかった。路地に面した家の主婦たちが、掃いたのだった。「掃(はく)」という字は、手と帚が組み合わさっている。
電気掃除機が心の延長になるだろうか。テレビのコマーシャルに自動掃除機が登場するが、手間よりも、心を省いているのだろう。

 一事が万事だ。コンクリートが細やかな心の働きを、封じ込めてしまった。

 家電製品はすべて心を省く。心が余計な時代になった。

 「婦」が女性を差別しているといって、男女の違いをなくしてよいのか。「男ごころ」「女ごころ」という言葉も、死語となった。

 演歌の題やことばに、「女の港」「男の港」「女坂」「男坂」があった。ちょっとした女らしい仕草に、胸を躍らせたものだった。もう女の港も、男の港も消えてしまった。
“ことば狩り”によって、やれ「セクハラ」だ「パワハラ」だ「右寄り」だといって、先祖から受け継いできた文化が否定されて、本音を語ることができない、息苦しい社会をつくってしまっている。

 日本では飽食のあまり、頭に血がのぼらなくなったために、うわべばかりに関心を奪われて、肝心な中身がおざなりにされている。

 経済閣僚の金銭授受疑惑が、国政を揺るがすような大問題ではないのに、野党が鬼の首を取ったように、国会で大きく取り上げられた。貴重な労力と、時間の浪費だった。

 京都選出の与党議員が妻の出産日に、不倫を働いたといって、全国的な話題となった。

 議員の辞職会見には、どうでもよいことなのに、新聞、テレビの記者が詰めかけて、テレビ中継までされた。

 私があの議員だったとしたら、まず会場を見回してから、開口一番、「みなさんはもちろん、『新約聖書』を御存知でしよう。イエスが不倫を働いたといって、石打ちの刑となる女のところを通りあわせて、『あなたがたのなかで、罪のない者から、石をとって投げなさい』といわれました。みなさんのなかで、罪のない方から質問して下さい」と、いっただろう。
 
 それでも、最初の記者が勇気を振り絞って、質問したら、会場が爆笑に包まれたにちがいない。

 私は暇なので、社会勉強だと思って、あの記者会見を終わりまで見たが、中年の女性記者が「奥様との結婚記念日を、憶えていますか?」と、質問した。

 結婚記念日とか、誕生日を祝うのは、アメリカとか、西洋のもので、そんなことを口にするようになったのは、昭和20年8月以後のことだ。戦争に負けるものではない。

 私だったら、薹(とう)が立った婦人記者の質問に、「私たち夫婦にとっては、毎日が結婚記念日ですから、そんな日を憶えている必要はありません」と、かませてやる。

 かなり以前のことになるが、愚妻が「お誕生日に、何か買って下さい」とせがんだので、「バカいうな。俺にとっては、毎日がお前の誕生日だ」といって、黙らせたことがあった。

 不倫問題は議員とその妻の2人だけの問題であって、1億2千万人がかかわる必要はまったくなかった。それよりも、日本が直面している緊要な問題が、いくらでもあるはずだ。

 物が満ち溢れて、人々が使い捨てるのに追いまわされて、昔も、未来もなく、刹那(せつな)だけに生きている。

 人間は直立することによって、広い視野を持つようになったが、屈んでばかりいるから、全員が狭窄症になっている。


  日米両国に蔓延する平和ボケの空騒ぎ
    Date : 2016/04/08 (Fri)
 アメリカの民主、共和両党の大統領候補レースで、不動産王のドナルド・トランプと、無名のバーニー・サンダース上院議員が、番狂わせを演じている。

 トランプは予備選で先頭に立つまで、アメリカの主流メディアから、暴言を乱発する「寄席芸人(ボードビリアン)」扱いにされて、泡沫候補として片付けられてきた。

 サンダース議員は緒戦で、ヒラリー・クリントンと並んだが、北欧型の福祉社会を目指す社会主義者(ソシアリスト)で、何よりも自立心を尊ぶアメリカン・ドリームに逆行しているのにもかかわらず、多くの若者たちによって支持されている。

 トランプとサンダースの両人はアメリカを支配する政界や、主流メディアが支えるエスタブリシメントに対する反乱の旗手である。

 2人は本音を語ることによって、多くの「もう、うんざりだ」と腹に据えかねていた国民に支持されて、アメリカを支配してきた建前を、破壊しようとしている。

 その一例を、あげよう。昨秋、「ニューヨーク・タイムズ」紙が、アメリカでミスター、ミセス、ミスが差別語だから、「Mx」と言い替えるようになっているという、記事を載せた。同性のカップル、性同一性障害者に対する差別になるというのだ。

 私は「Mx」をどう発音したらよいのか、分からなかったので、アメリカの友人に電話をしてたずねた。「ミックス」と発音するそうだった。

 読者のなかでバカバカしいと思われる方も多いだろうが、日本でも同じようなことが起っていることに、気付いていられよう。

 しばらく前に、警察庁と警視庁が「婦人警官」「婦警(ふけい)」の婦が女性を蔑視しているといって、「女性警察官」「女警(じょけい)」と言い替えた。

 女性が帚(ほうき)を持っているさまが、女性を蔑んでいるというのだ。私は幼い時から、母が箒を手にして、心をこめて掃除しているのを見て、帚が母の心の延長なのだと思ってきた。

 つい、このあいだまでは朝、家を出ると、路地に清々(すがすが)しい箒目(ほうきめ)があった。路地は舗装されていなかった。

 路地に面している家の主婦たちが、掃いたのだった。「掃(はく)」という字は、手と帚が組み合わされている。

 いったい、電気掃除機が心の延長になるだろうか。テレビのコマーシャルに自動掃除機が登場するが、手間よりも、心を省いているのだろう。

 一事が万事だ。コンクリートが全国の路地を覆うようになってから、細かな心の働きも封じ込められてしまった。
“ことば狩り”によって、やれ「セクハラ」だ「パワハラ」だ「右寄り」だといって、先祖から受け継いできた慣習や、常識が否定されて、本音を口に出すことができない、息苦しい社会をつくってしまっている。

 ミスター、ミセス、ミスも、「婦」もいけないという社会は、病んでいる。

 日本でも飽食のあまり、頭に血がのぼらなくなってしまったために、物事のうわべばかりに関心を奪われて、肝心な中身がおざなりにされていることが多い。

 経済閣僚の金銭授受疑惑が、国政を揺るがすような大問題ではないのに、野党が鬼の首を取ったように、国会で大きく取り上げられた。貴重な労力と、時間の浪費だった。
京都選出の与党議員が妻の出産日に、不倫を働いたといって、全国的な話題となった。議員の辞職会見には、新聞、テレビの記者が詰めかけて、テレビ中継までされた。

 これは、議員とその妻の2人の問題であって、1億2000万人がかかわる必要はまったくなかった。それよりも、日本が直面している緊要な問題が、いくらでもあるはずだ。

 物が満ち溢れて、人々が使い捨てるのに追いまわされているために、刹那(せつな)だけに生きているのだ。


  泡沫候補だったトランプが大番狂わせを起こした理由
    Date : 2016/03/22 (Tue)
 アメリカの共和党の大統領候補レースで、不動産王のドナルド・トランプが、大番狂わせを演じている。

 トランプは予備選で先頭を切るまでは、アメリカの主要メディアから、暴言を連発する「寄席芸人(ボードビリアン)」扱いにされて、泡沫候補として片付けられてきた。

 だが、いまでは共和党の大統領候補となるかもしれないと、いわれている。

 民主党は、3月1日の“スーパー・チューズディ”で、ヒラリー・クリントン夫人がサンダース上院議員に大差をつけて、大統領候補指名を手にしている。

 東京では外務省が、共和党の大統領候補になろうとも、ヒラリーがホワイトハウスを射止めることを、あげて祈っている。

 ヒラリーなら、オバマ政権の国務長官として、日本に独特な憲法上の制約を承知しているはずだというのと、外交アドバイザーとして、国務省で日本を担当していた、ロバート・キャンベルがついているためだ。

 トランプは、日米安保条約が日本に一方的に有利なものであって、アメリカに不公平な負担を強いているから、日本と交渉して、改定するべきだと主張している。

 アメリカは多くの諸国と軍事条約を結んでいるが、日米安保条約が唯一つの例外として、アメリカが日本を守ることを、片務的に約束している。

 韓国も、フィリピンも、アメリカと対等な相互防衛条約を結んでいる。ヨーロッパの人口40万の小国ルクセンブルグも、北大西洋条約機構(NATO)の一員として、アメリカをはじめとする加盟国を守る義務を、負っている。

 アメリカが日本との間だけに、アメリカが一方的に日本を守る保護条約を、結ばざるをえなかったのは、アメリカが日本に占領下で「平和憲法」を押しつけたためだった。

 このために、日米関係は今日にいたるまで、きわめて変則的なものとなってきた。

 もし、アメリカが「平和憲法」を強要していなかったとすれば、日本が独立を回復してから、米韓、米比条約と同じように、日米関係が相互防衛条約によって結ばれていたはずだ。そして、日本国民は誰一人として、不思議に思うことがなかったはずだ。

 トランプは無知から、暴言を吐いているわけではない。

 抜け目ない経営者であるだけに、マスコミを巧みに操って、利用する手腕には、私は舌を巻かされてきた。有名な億万長者(ビリオネア)が暴言を発するたびに、マスコミが興味本位に大きく取り上げて、全米に報道することによって、トランプ像が膨れ上がってきた。

 トランプはフィラデルフィアの名門校のペンシルバニア大学のウォートン・スクールでMBA(経営学修士)を取得しているから、優秀な学生だったのだろう。私は同大学から講義に招かれたことがあるが、ウォートンのMBAは、ハーバードのMBAと並んで評価が高い。

 今回、トランプはホワイトハウスを狙うのに当たって、内外問題に通じている専門家集団を、ブレインとしてかかえている。国防情報局(DIA)元局長のマイケル・フリン中将(退役)が、外交・安全保障問題のアドバイザーをつとめている。

 いまでも、国務省は中国と日本に対して甘く、国防省が両国を醒めた目で見てきた。


  足元が揺らぎ始めた中国・習近平体制
    Date : 2016/03/14 (Mon)
 2016年が明けるとすぐに、テレビ局に招かれて、「新しい年の世界がどうなるか」予測する番組に出演した。

 いま、世界が混沌として、混乱がいっそうひろがりつつある。

 まず、私は世界に内部から崩壊してしまった地域と、内部崩壊が進みつつある国があって、その隣にあるために巻き添えになっているか、そうなる国々があると、指摘した。

 中東が崩壊した地域だ。そのわきで、中東や、北アフリカから、難民がヨーロッパに蝗(いなご)の大群のように押し寄せて、EU(ヨーロッパ連合)が解体する危機に臨している。

 中東が溶解している。混乱がいっそうひろがって、サウジアラビアなどのアラビア半島の王制産油諸国を、呑み込もうとしている。

 この場合に、アメリカも、ヨーロッパ諸国も、アラビア半島諸国を救うことができない。

 日本に眼を向ければ、日本のすぐわきで、中国と、北朝鮮が、内部崩壊へ向かっている。

 2017年が終わる前に、中国か、北朝鮮が“突然死”する可能性が、目の前にある。

 習近平体制が、綱渡りをしている。習近平国家主席は中華帝国の皇帝であるが、歴代の中華帝国の皇帝は、天から天命を授かって中国を統治してきた。天命を失うたびに、王朝が倒れた。

 中国はケ小平による改革以後、共産主義イデオロギーを捨てて、経済発展を政権を天命としてきた。その天命を、失おうとしている。

 中国経済がすでに、破綻している。習体制は、何とか生き延びようとして、無理に無理を重ねている。AIIB(アジア・インフラ投資銀行)をとっても、国際通貨基金(IMF)が人民元をSDR(特別引出権)の構成通貨として、国際通貨に加えたのをとっても、なすことすべてが失敗している。

 習近平国家主席は、2019年に2期目の任期に挑戦する。虚偽によって塗り固められた体制が、長く続くはずがない。

 習近平体制は足元が揺るぎはじめたために、「5千年の偉大な中華帝国の復興」をスローガンとして打ち出して、膨張政策をとってきたが、これも大失敗だ。かえって周辺諸国が反発して、日本から東南アジア、インドまでの諸国が、中国包囲網をつくるようになった。

 そこで、危機的な状況を乗り切るために、独裁体制の強化をはかって、熾烈な権力闘争を進め、大規模な軍改革を強行するなどしているが、1年以内に何が起るか分からない。

 中国という巨人が、高熱に浮かされている。体制が内部崩壊に迫られれば、国内を引き締めるために、国外に危機をつくりだそう。その場合に、尖閣諸島を奪いにくる可能性が、現実となる。

 北朝鮮の金正恩政権も、体制を固めるために、大粛正を強行してきた。金体制も、薄氷のうえを歩いている。金正恩第一書記が、暗殺される可能性もある。

 北朝鮮が内部崩壊をきたした時に、核兵器がどうなるか。
もし、韓国のもとで朝鮮半島の統一が実現して、統一韓国が核武装国家となったら、日本にとって悪夢となろう。

 新年のテレビ番組で、アメリカの大統領選挙が話題となった。

 私は「1つだけ、朗報があります」と前置きして、「2008年にオバマ大統領が当選した年の新年にも、4年前に再選を果した新年にも、この番組に招かれて、誰が日本にとって大統領となったら望ましいか、たずねられて、『そんなことが話題になるのは、小国はいざ知らず、世界のなかで日本だけだ』と答えました。今年はそんなことが、話題になっていません」と、いった。

 もはや、日本がアメリカに依存することができないという意識が、日本国内でもひろまっているのだ。

 アメリカを頼りにせずに、日本が自立せざるをえない時代に入ったのだ。


  中国に「ノー」を突きつけた台湾の総統選挙
    Date : 2016/02/22 (Mon)
 1月16日に、台湾の総統選挙で、民進党の蔡英文候補が圧勝したというニュースを知って、思わず「加油(チャヨウ)! 台湾(タイワン)!」と、叫んだ。

 「加油」は台湾語で、「頑張れ」だ。民進党は、一院制の国会である立法院においても、単独多数を獲得し、かつて大陸から蒋介石に率いられて、台湾へ逃げ込んできた国民党は、それまでの議席数を半減した。

 前日、愚妻が長年使いこんだ財布を、買い替えに出かけるというので、緑色を選ぶようにいった。緑色は国民党の青色に対して、民進党のシンボル・カラーである。

 選挙の最大の争点は、台湾の人々が「中国人なのか、台湾人なのか」というものだった。台湾人は親中派だった馬英九政権を葬って、台湾が中国によって取り込まれてしまうことを、拒んだのだ。

 国民党の青色は、国民党軍が毛沢東の共産軍との内戦に敗れて、台湾海峡を渡って台湾を占領した時に、翻していた『青天白日旗』の色である。今日でも、歴史の大きな捩(ねじ)れによって、『青天白日旗』が台湾の国旗となっている。

 中国は台湾が「中国の一部」だと主張して、もし、台湾が「中国から分離して、独立」をはかった場合には、「武力を行使する」といって、威嚇してきた。

 しかし、台湾国民が総統選挙によって、中国に「ノー」を突きつけたことは、習近平国家主席の対外戦略に、手痛い齟齬(そご)をきたすものとなった。

 習主席は「偉大なる5000年の中華文明の復興」を呼号して、アジアの覇権を握ることを目指して、アメリカに太平洋を米中の二大国によって二分する「G2」体制を受け入れるように、提唱してきた。

 この戦略を実現するために、2014年以後、南シナ海で七つの岩礁を埋め立てる、大規模な建設工事を進めて、南シナ海を中国の内海(うちうみ)にしようと目論んできた。国連海洋法条約は満潮時に海面下に沈む、これらの岩礁を領土として認めていない。

 北京の戦略は南シナ海から東シナ海まで、“中国の浴槽”とすることだったのに、台湾に“嫌中政権”が登場したことによって、南シナ海から東シナ海までの線に、ポッカリと大きな穴があいてしまった。

 習国家主席は、臍(ほぞ)を噛んだにちがいない。

 もっとも、台湾は地理的にも、中国の一部ではない。インドネシアのボルネオ島からフィリピン、日本列島まで点々と連なる島々の列に属している。台湾人は漢族ではないし、歴史的にポルトガル、スペイン、明や、清が一時的に支配していたことがあったが、中国の一部だといえない。

 台湾人と中国人は、文化的にも大きく隔たっている。

 台湾人は中国人が、無教養で、貪欲で、公徳心がなく、不潔であることから、中国人を台湾語で「猪(テイ)」(豚)とか、「死阿陸(シーアラア)」(死んでしまえ)と呼んでいる。韓国人も歴史を通じて、今日でも陰で中国人を、「垢野郎(テンノム)」と呼んでいる。

 もっとも、アメリカは台湾が中華人民共和国の一部であることを、認めていない。中国を恐れて、台湾が「中華民国」という国号を変えたり、台湾として独立することに、反対している。

 台湾は現行の国名と『青天白日旗』で、我慢し続けねばならない。


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